2019年から開始された、中小企業を対象に認定を受けると、税制優遇や金融支援といった支援を受けられる「事業継続力強化計画」といった制度をご存知でしょうか。

本記事では、その制度の概要と事例をご紹介します。

○事業継続力強化計画とは

昨今、自然災害に際しても事業を継続するための準備を行っておく、BCP(事業継続計画)の策定が推奨されています。しかしながら、中小企業においてこのBCPを導入している企業は20%ほどであり、広く対策されているとは言えない状況にあります。

そこで、政府は中小企業を対象に、防災や減災に関する事前対策の計画、いわゆるBCPを策定した企業に対し補助を行うことで、BCPの普及をはかろうとしています。これが「事業継続力強化計画」が導入されはじめた背景です。

この事業継続力強化計画は、BCPにかかる定められた項目の事前対策を計画として策定の上提出し、経済産業大臣の認可を受ける必要があります。認可を受けることで、各種優遇を受けることが可能となる制度となっています。

認定を受けるにあたって記載しなければいけない項目例が以下です。

＜事業継続力強化の目標＞・自社の事業活動の概要・事業継続力強化に取り組む目的・事業活動に影響を与える自然災害等の想定・自然災害等の発生が事業活動に与える影響（人物、建物・設備、資金繰り、情報、その他）＜事業継続力強化の内容＞・自然災害等が発生した場合における対応手順・事業継続力強化に資する対策および取り組み・事業継続力強化設備等の種類・事業継続力強化の実施に協力する者の名称および住所ならびにその代表者の氏名ならびにその協力の内容・平時の推進体制の整備、訓練および教育の実施その他の事業継続力強化の実効性を確保するための取り組み

そして、事業継続力強化計画の認定を受けた場合、大きく分けて３つの優遇を受けることができます。

1.税制優遇一定規模の自家発電機、地震対策設備を導入した場合に防災・減災設備に対して特別焼却費を計上することができます 2.金融支援「信用保険の保証枠の別枠追加」や「防災にかかる設備資金の貸付金利引き下げ」等を受けることができます 3.補助金新しいものづくりやサービス開発に挑戦するための「ものづくり補助金」を受け取ることができます。また、災害時の停電に備えて自家用発電設備などを導入する際、費用の3分の2を補助金として受け取ることも可能です（上限5,000万円）

弊社、eniceedもこの事業継続力強化計画の認定を受けております。ご関心がある場合は、お気軽にお問い合わせください。

○事例

以下に具体的な事例として、経産省が公表している企業の事例を一つご紹介します。

A社

業種:食料品製造業

従業員数:60名

所在地：千葉県

事業継続力強化計画策定のきっかけ台風15号により、向上が停電し10日間の営業停止が余儀ない事態に。結果、数十トンの原材料、加工商品を廃棄することになり、1600万円の損害につながった。

策定した事業継続力強化計画の目標 計画期間:2020年10月~2023年9月 事業継続力強化に取り組む目的人命最優先、社員との家族安全生活を守る。地域社会の安全に貢献。製品供給の継続等により、お客様への影響を極小化。 想定する自然災害水災 ー 最大2m以上の浸水台風 ー 2019年の台風被害（風害）が今後も予想。 想定される影響 事業活動に与える影響が最も大きいのは、風害（台風起因も含む）と想定。 （人員に関する影響）営業時間中に被災した場合、停電に加え、設備の落下、転倒などにより、けが人が発生。 （建物・設備に関する影響）2019年に発生した台風被害より、当社の事業拠点は 年に発生した台風被害より、当社の事業拠点は大規模な停電に見舞われ、電力について 1週間程度、供給が停止。これにより、生産ライン全ての停止および原材料の大量処分が発生。今後も当該事象が想定。 （資金繰りに関する影響）設備の稼働停止や営業停止により営業収入が得られないことで運転資金がひっ迫する可能性。運転資金の逼迫により、復旧費用の捻出が困難となることも想定。 （情報に関する影響）オフィス内にあるサーバの浸水より、バックアップデータ以外は喪失する可能性があり、取引先への支払や円滑な売掛金等の回収ができなくなる。 （その他影響）道路状況の悪化により、原料である野菜の調達が困難となることが想定。加えて最終製品の出荷も不可能となり、取引先に製品納入が行えないなどの事態が想定。

　ただ、このような制度が発足されると、認定を受けること自体が目的になってしまいがちです。最も重要なのは、 認定を受けた後、申請した際に取り決めた「事業継続力強化の内容」をきちんと実行していくことであり、そのことは忘れないようにしたいものです。