労務管理に備える~ハラスメントリスクから企業を守るために
2022年4月から中小企業にもパワハラ防止法が適用され、さらに働き方改革や2024年問題に伴う労使間のトラブルが増加しています。このような社会的背景の中、企業経営者にとって、労務リスクの管理が一層重要になっています。この記事では、実際の事例を交えながら、よくあるリスクケースとそれらへの備えについて解説します。
中小企業における典型的な労務トラブルの例
1. 試用期間中の問題社員が辞めた事例
事例:
ある中小企業では、期待して採用した営業職の社員が試用期間中に辞めてしまいました。上司が業務に慣れるよう厳しく指導を行ったものの、社員本人は「精神的に追い詰められた」と感じて退職を決意。結果的に、社員が「退職勧奨」と主張し、弁護士を通じて未払い賃金や損害賠償を請求してきました。
対策:
試用期間中の指導内容を記録し、指導方法が適切であることを第三者が検証できる形にする必要があります。また、指導の際にメンタル面への配慮を忘れないことも重要です。
2. 「善意の指導」がパワハラと認定されたケース
事例:
IT企業で、社員のスキル向上を目指して、上司が頻繁にミーティングを実施しました。しかし、社員はこれを「無駄な時間の拘束」と感じ、ストレスを訴えました。後に労働基準監督署の調査で「心理的負担を与えるパワハラ」と認定され、企業には是正勧告が下されました。
対策:
定期的に指導内容を見直し、社員一人ひとりの状況や意見を考慮した柔軟な対応が求められます。また、外部のコンサルタントに相談し、指導方法を改善することも効果的です。
3. 顧客からのハラスメントが引き金になった問題
事例:
サービス業の企業で、顧客が社員に対して執拗に個人的な要求を繰り返し、社員が精神的な疾患を発症しました。後に、社員側が「会社が適切な対策を取らなかった」と訴え、企業には管理責任が問われる事態に発展しました。
対策:
顧客対応のルールを明文化し、社員を守る仕組みを作ることが重要です。さらに、トラブル発生時には即座に対応するための相談窓口を設置することが有効です。
4. 職場外の交流が問題化した事例
事例:
ある企業の送別会後、新入社員に上司が「プライベートな連絡をするのが礼儀だ」と個人的にメッセージを送りました。この行動がプレッシャーとなり、結果的に社員が会社への不信感を抱く原因となりました。社員は後に退職し、労務管理の不備を指摘するトラブルに発展しました。
対策:
職場外での交流においても、企業として一定の指針を設け、過度なプライベート接触を控えるよう周知徹底することが重要です。
労務リスクに対する具体的な備え
- 明確なルール作り
社員同士や顧客とのやり取りに関するガイドラインを整備し、トラブルを未然に防ぎましょう。 - 従業員教育の強化
ハラスメント防止研修やメンタルヘルス講習を定期的に実施し、トラブル発生リスクを軽減します。 - 相談窓口の設置
社員が問題を早期に報告できる環境を整えることが、トラブルの早期解決につながります。外部専門機関との連携も有効です。 - 保険を活用する
万一のトラブルに備え、企業向けの保険に加入することでリスクを軽減できます。例えば、AIC損保の労務トラブル対応保険は、訴訟や社員とのトラブル発生時に企業を支援する強力なツールです。
まとめ
労務トラブルは、企業の経営に大きな影響を与えます。しかし、リスクを正確に把握し、適切な対策を講じることで、これらの問題を回避し、社員と企業がともに成長する環境を作ることができます。2024年に向けて、自社の労務管理体制を見直してみてはいかがでしょうか?