中小企業に求められる治療と仕事の両立支援体制の構築
会社が成長していくためには、従業員が安心して働き続けられる職場環境の構築が不可欠です。必要な人材に長く働いてもらうために、中小企業が取り組むべき治療と仕事の両立支援体制について紹介します。
中小企業に求められる、治療と仕事の両立支援体制の構築
優秀な人材の確保と定着は、どの会社にとっても重要なテーマのひとつです。コロナ禍でも事業を継続し、さらに新規事業の展開に必要なリソースを投下して会社の成長につなげていくためには、従業員が健康で働き続けられる職場環境を整えることが不可欠です。
総務省によれば、日本社会は少子高齢化の進行により、15~64歳の生産年齢人口の減少が進んでおり、2017年には7,596万人と総人口の60%を占めていた生産年齢人口が、2040年には5,978万人と総人口の53.9%までに減少すると推計されています。
そのような背景から、中小企業はここ10年余り、慢性的な人手不足の傾向がありました。
コロナ禍以降は人材の需給バランスが変わったこともあり、厚生労働省によれば2019年では平均1.60倍だった有効求人倍率も、2020年には平均1.18倍まで下がっています。とはいえ、人手不足が緩和されても、会社の核となる管理職候補や中堅層は簡単に得られるものではありません。優秀で経験のある従業員には、健康で長く働いてもらえることが重要です。
出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年12月分及び令和2年分)について」
しかし、独立行政法人労働政策研究・研修機構によれば、在職しているものの病気などで勤務できない休業者の数は、2020年12月時点で約202万人にもなります。厚生労働省の労働力調査では、就業者の総計が同時点で約6,666万人ですから、約3%の就業者が休業していることになります。ほかにも、病気の治療が必要になった場合、会社の休業制度を使うことなく退職する人も少なくありませんので、病気で就業できない人はもっと多いことになるでしょう。
そのため、従業員に長く健康で働いてもらうために、会社による治療と仕事の両立支援に関する制度の充実が求められているのです。
出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構「国際比較統計:休業者数」
出典:厚生労働省「労働力調査(基本集計) 2020年(令和2年)12月分」
治療と仕事の両立サポートが必要な従業員は多い
労働施策総合推進法の改正のポイントは、パワハラ対策が法制化されたことです。これにより、事業主は、職場のパワハラ防止のための雇用管理上必要な措置を講じる義務が発生しました。また、職場でパワハラに関するトラブルが生じた場合は、調停など個別紛争解決援助の申し出を行うことができます。
なお、「職場」が示す範囲としては、事業主が雇用した労働者が業務を遂行する場所を指しますが、通常働いている場所だけではなく、出張先など労働者が業務を遂行する場所も含まれます。また、「労働者」の定義としては、正規雇用労働者に加え、パートタイム労働者、契約社員などの非正規雇用労働者を含む、すべての労働者が該当します。
また、今回の改正では、セクハラやマタハラの防止に関して、国や事業主、労働者の責務が明確化されました。併せて、ハラスメントに関して事業主に相談した労働者に、不利益な扱いを行うことも禁止されています。
治療後に従業員が感じる不安
治療と仕事の両立を希望する従業員の多くが不安を抱くのは、まず「治療後に自分の体はどれくらいの就業に耐えられるのか」ということです。本人も周りも誤解しがちですが、病気が完治しても以前と同じように働けるわけではありません。
ですから、会社側からの支援が不十分だと、就業は難しいと感じて退職してしまったり、前と同じように動けない自分に落ち込んだり、周囲の無理解に不満を抱いたりするなど、望ましくない結果となりがちです。
会社は、そのような従業員の状況を踏まえて、両立支援体制を構築していく必要があります。
【専門家監修】中小企業に求められる、治療と仕事の両立支援体制の構築
監修者プロフィール:
佐野真子(さのまこ)
キャリアコンサルティング総研株式会社代表取締役
国家資格キャリアコンサルタント
両立支援コーディネーター(独立行政法人労働者健康安全機構)
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